今回はストレスチェックの実施義務が今後50人未満の事業所にも拡大されるようになる可能性があるため、その詳しい内容についてお伝えいたします。

1. ストレスチェックとは

ストレスチェック制度は、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、メンタル不調を未然に防止する仕組みです。
労働者の心理的な負担の程度を把握するために、医師や専門家などが実施する「ストレスチェック」と、その結果をもとに行われる「集団分析」、さらには分析に基づいた「職場環境改善」の2つで構成されています。
この制度は、労働者のメンタルヘルスを維持し、職場の生産性を向上させるために非常に重要です。

2. ストレスチェック制度の義務

これまで、ストレスチェックは50人以上の事業場に対して実施義務がありました。
一方で、50人未満の事業場については、労働者のプライバシーの保護が難しいという理由から、実施は努力義務とされていました。
このため、小規模な事業場では、実施しないことが一般的でした。
しかし、この状況に変化が訪れようとしています。

厚生労働省は、9月30日に今後の方針として、50人未満の事業所でも、努力義務から実施義務へと拡大させることを提言しました。
具体的に、50人未満の事業場のおいては、原則としてストレスチェックの実施を外部に委託することが推奨されるとしています。

一方で、事業者の負担軽減の観点から、労働基準監督署への報告義務は課されない方向で検討されています。

ややこしいですが、「ストレスチェックするように努める。だだし罰則はない」という努力義務から、「ストレスチェックをしなければならない」という実施義務へ変わることが予測されます。

3. そもそもストレスとは

「ストレス」という言葉は日常的に良く使いますが、具体的な中身や定義については、中々知られていません。
ストレスは、心理学的には「ストレッサー」と呼ばれる外的または内的要因によって引き起こされる心身の反応として定義されます。

ストレッサーは、環境や状況から生じる刺激であり、これに対する反応がストレス反応です。ストレッサーには、仕事のプレッシャー、家庭での問題、人間関係のトラブル、経済的な不安など、さまざまな種類があります。
ストレッサーを受けて、私達がそれを認知し、ストレス反応を引き起こすと考えられています。

ストレス反応は、体と心の両方に現れます。
心理的な反応としては、不安、緊張、焦り、抑うつ感などが挙げられます。
身体的には、心拍数の増加、血圧の上昇、筋肉の緊張、消化不良など、さまざまな症状が現れることがあります。
これらの反応は、一般的に「戦うか逃げるか(闘争逃走反応)」という生理的メカニズムに基づいています。
このメカニズムは、危険に直面した際に身体が迅速に反応できるためだと考えられています。

4. ストレスコーピング

最後に、どのようにストレスと向き合っていければいいのかお伝えします。
一般的に「ストレス対処」と呼ばれるものは、心理学的には「ストレスコーピング」と言います。
ストレスコーピングは、主に3種類あります。

(1)ストレッサーへのコーピング
1つ目は、そもそもの要因であるストレッサーへ対処する方法です。
ストレッサーを具体的に特定し、その原因に対処するための計画を立てます。
例えば、業務が過剰であれば、タスクの優先順位を見直したり、上司と相談して業務
量を調整したりすることが効果的です。

(2)認知へのコーピング
2つ目は、ストレッサーに対する認知(考え方や受け止め方)へ対処する方法です。
ネガティブな受け止め方を見直し、ポジティブに考えます。
例えば、「失敗したらどうしよう」という考えから、「失敗から学べる貴重な経験
だ」と捉え直すことです。

また、認知は変えずにありまのままで、ありのままの自分の考えに気づいたり、受け
止めたりするマインドフルネスも有効です。

(3)ストレス反応へのコーピング
3つ目は、ストレッサーを受けた際の反応へ対処する方法です。
体の緊張を解くために呼吸や筋肉など使ってリラクセーションします。
体の一部へ力を入れたり緩めたりする、一定のリズムで集中して深呼吸するなどを行
うことで、緊張を軽減させます。

以上となります。
いかがだったでしょうか。
法的に実施義務が求められるストレスチェック制度と合わせて、ストレスそのものへの理解を深めることは、労働者のメンタルヘルスを向上させるだけでなく、企業の生産性向上にも寄与します。


今回紹介したストレス対処についての話は、一般的に考えられているものですので、実はもっと沢山あります。心理学にも流派みたいなものが存在するので、調べてみると、各流派ごとに考え方が異なり面白いです。