はじめに
日本において9月は台風が多く発する時季です。2024年の台風接近件数は、8月から例年に比べ多い傾向にあります。
また昨今では、公共交通機関も積極的に計画運休を行うようになりました。先日の台風10号(サンサン)では、台風から遠い関東地方でも大雨が降ったのも記憶に新しいかと思います。
さて、今回は台風発生時等においての勤怠管理についてお伝えさせていただきます。
台風が上陸し、始業開始前に公共交通機関がストップして出勤ができなくなった場合
この場合は、「使用者の責めに帰すべき理由」に該当するかというと、これは不可抗力によるものと判断されますので、休業手当を支払う必要はありません。
また出勤できるものの、台風等により事業所が破損し事業が行えない等の場合も同様です。
台風接近時の出勤については、予防的観点から「臨時休業」「午後から帰宅」「自宅待機」「在宅勤務」等の指示をされている事業所も多いのではないでしょうか。
台風の影響で、夕方から交通機関が止まる恐れのある場合
【ケース1】
「個々に帰宅の判断をゆだねる」とした場合
この場合は帰宅するかどうかの判断は社員の判断によるため、休業手当の支払は必要ありません。ノーワークノーペイですので、不就労の時間の賃金は発生しません。
【ケース2】
「午後は臨時休業」とし順次帰宅とした場合
この場合は、会社の「命令」で労働者に帰宅をさせているので、社員側に決定権はなく「会社都合」で帰宅すると考えられています。
指示を行った時点では、会社や労働者には台風の被害はない状態ですので、「不可抗力により休業せざるを得ない場合」には該当せず「使用者の責めに帰すべき理由」となり、会社には休業手当を支払う義務が生じると言えます。
判断のポイントは「会社都合」なのか「本人の判断」なのかです。
有給休暇奨励という判断
台風接近時に、休業手当を支払うのも避けたい、だからと言って社員が無理をして安全が脅かされるのも避けたい、というのが本音だと思います。
ケース2の場合で、「希望がある場合は休業を解除して有休取得もOKとする」のも可能です。
休業手当は就業規則にもよりますが、多くの場合は「平均賃金の6割」と規定しているかと思います。休業手当は通常の賃金より少なくなる一方で、有給休暇の場合は100%となります。
有給休暇を会社が強制的に取得させることは違法ですので、「台風接近のため強制的に有給を消化!」というような対応はできません。ですが、任意的に有給休暇を取得してもらう形であれば、法的な問題はありません。社員は賃金が減ることを回避できますので、有休を使用する社員も出てくるのではないでしょうか。
天災が発生した場合に、迅速に、何より可能な限り安心して社員が行動できるよう、労使ともに事前に心構えしておくことも大切ですね。