はじめに

賃金は働く人にとっても、会社側にとっても特に気になる要素です。
最低賃金は毎年上がり続け、2024年現在では全国平均が時給1,004円、東京が1,113円となっています。
従業員にとっては喜ばしいことですが、会社は人件費の確保が大切になります。

そこで、今年はいくら最低賃金が上がるのか、現時点で考えられる事項についてご紹介します。

1. 最低賃金はどのようにUPしてきたか

労働政策研究・研修機構(2024)によると、2002年では全国平均が663円だったのが、2007年では687円、2013年で764円、2018年で874円、2023年で1,004円と上がっていきました。

※参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構(2024).最低賃金(地域別最低賃金 全国加重平均額)

これを見ると、2000年初め頃は、数円だった最低賃金の上昇が、近年だと30円や40円程の向上をしていることが分かります。
単に毎年向上しているだけでなく、加速度的に向上しています。

会社は、この加速度的な上昇についていくように人件費を確保する必要がありますが、年々大変になっていきます。

2. 最低賃金5%引き上げ平均1,054円へ

厚生労働省は、2024年の最低賃金の引き上げ額の「目安」を全国一律50円に決定し、厚生労働大臣に申告しました。

目安どおりに引き上げられた場合の上昇率は5.0%で、最低賃金の全国平均は1,054円に達します。
引上げ額は昨年の43円を上回る50円で、4年連続で過去最大となります。

北海道や茨城、滋賀など8道県が新たに1,000円に到達し、到達済みの地域を含めると、計16都道府県が1,000円以上となります。


引上げ後の最高額は東京の1,163円、最低額は岩手の943円です。
最高額に対する最低額の比率は81.1%となり、80.2%だった昨年に比べ地域間格差が縮小します。

今後、目安を踏まえて都道府県の地方審議会が審議・答申し、引上げ額が決定されます。

目安の決定に当たり、消費者物価が上昇している状況を重視したほか、賃金上昇率が昨年度を上回る水準にある点も考慮しました。

一方で、物価高による倒産が増加傾向にあることから、答申では、一部の中小企業・小規模事業者の賃金支払能力の面で「50円」の目安額は厳しいという指摘もあります。
政府に対し、中小企業などが賃上げ原資を確保できるよう、生産性向上の支援策、価格転嫁対策の継続的な実施を要望しました。

3. 最低賃金UPに伴う会社の対応

2024年の最低賃金が5%引き上げられ、1,054円となることが予測されます。
これに伴い、会社は様々な対応を求められます。

ここでは、最低賃金の引き上げに対する会社の対応策について考えてみましょう。

まず、会社は賃金改定に合わせた給与体系の見直しが必要です。
最低賃金が上がることで、現在の給与が基準を下回る場合、即座に調整しなければなりません。
給与を改定する際には、労働者の職務内容や役割に応じた賃金体系を維持するが重要です。
また、賃金改定により人件費が増加するため、会社はその影響を加味し、長期的な予算計画を見直す必要があります。

次に、賃上げに関する情報を社員に適切に伝えることも重要です。
会社は、新しい給与水準やその背景、今後の計画について説明し、従業員の理解を得ることが大切です。
日頃からコミュニケーションを大切にすることで、社員のモチベーションを高めるとともに、賃金改定に対する不安や疑問を解消することができます。

最後に、企業は法令遵守の姿勢を基に、労働基準法など関連する法規制に従うことが求められます。
最低賃金引上げに伴い、違反が発覚すると企業の信用に関わる問題となりまねません。
正確な賃金支払と適切な労働環境の整備を行うことで、法令遵守を確保し、会社の信頼性を維持することができます。

このように、最低賃金の引上げは会社にとって多くに対応を必要としますが、適切な対応を行うことで、持続可能な経営と社員の満足度向上を実現することができるでしょう。


今回は最低賃金についてでした。
豆知識として、最低賃金が時給ベースで考えられるようになったのは2002年からだそうです。2002年前は日額と時給の2つの基準でしたが、それ以降は時給ベースが基本と考えられるようになりました。公平性や分かりやすさなどの理由でこうなったそうです。