はじめに
近年では、「妊活」という言葉をよく耳にしますが、身の回りに「不妊治療」を受けている方はいらっしゃるでしょうか。
今回は厚生労働省から発行されている「不妊治療を受けながら働き続ける職場づくりのためのマニュアル」を参考に、不妊治療と仕事の両立支援の重要性についてお伝えいたします。
1. そもそも不妊とは
日本産科婦人科学会によると、「不妊とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、1年間妊娠しないもの」と定義されています。
また、男女ともに加齢により妊娠しにくくなり、治療を先送りにすると妊娠しなくなるリスクがあるため、この場合1年経たずとも治療を開始した方が良い場合もあるとされています。
2. 不妊の原因や治療について
①不妊の原因
不妊というと「女性の問題」とされがちですが、不妊の原因は女性だけにあるわけではありません。WHOによれば約半数は男性に原因があるとされており、検査をしても原因が分からないこともあります。不妊は今や男女を問わず深刻な問題となっています。
②不妊治療の方法や期間等
治療の方法は、男女ともに一通りの検査を受けたのち、特に問題がなければ、排卵日を特定して自然妊娠を待つ「タイミング法」、それでも妊娠しない場合は次のステップで「人工授精」、この方法で妊娠しない場合は、「体外受精」「顕微授精」といった高度な治療に進みます。
治療の期間等は、個々人により全く異なりますが、平均的には以下の通りです。
一般不妊治療(「タイミング法」や「人工授精」)は、原因探索に最短でも2か月かかり、その後結果が出るまでに3か月ほどかかることが多いため、半年から1年以内というイメージです。
一方、生殖補助医療(「体外受精」や「顕微授精」)は原因の探索を短めにしてすぐに治療を始められるため、最短で3か月、一般的には6か月程度となります。
3. 不妊治療の現状
不妊治療は特別な治療であると思われがちですが、2021年には69,797人が生殖補助医療(「体外受精」や「顕微授精」)により誕生しており、これは全出生児の8.6%に当たり、約11.6人に1人の割合になります。また、不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は22.7%で、夫婦全体の約4.4組に1組の割合になります。
これだけ身近でありまがら、職場で「不妊治療している」ということを周囲に話しづらく感じている人が多くいるため、周りの理解、協力を得られず不妊退職してしまう人が後を絶ちません。
4. 不妊治療と仕事の両立がなぜ難しいのか
不妊治療をしたことがある労働者の中で、「仕事と両立できなかった」とした人の割合は、26.1%を占め、4人に1人以上となっています。なぜ両立が難しいのでしょうか。
その理由は、不妊治療の特殊性にあります。
不妊治療は女性の生理周期にあわせて注射や投薬、検査が行われるため、突発的で頻回な通通院が必要となります。そのため、通院日に外せない仕事が入るなど、日程調整が難しいことや、投薬等により体力的にも精神的にも大きな負担がかかることが多いため、両立が困難となってしまうのです。
5. 両立のために必要なものとは
では、どうしたら不妊治療と仕事の両立がしやすくなるでしょうか。
現在、不妊治療の支援制度等を実施している企業は約4分の1程度であり、ここ数年不妊治療に対する企業の意識は高まってきています。また、その中で「年次有給休暇」「短時間勤務やテレワークなど柔軟な勤務を可能とする制度」「通院・休息時間を認める制度」等の支援制度が多く利用されています。
しかし、こういった制度がある中で、「言いづらい」などの理由から約半数の人が不妊治療を公言していないというのが現状です。
制度を整えることももちろん大切ですが、まずは従業員ひとり一人が不妊治療について理解を深めることで、当事者が制度を利用しやすくする「風土」を作ることが何よりも重要なのではないでしょうか。
その他、詳しい内容は以下URLをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14408.html