はじめに
今回は中小企業の賃上げ状況についてです。
賃上げは従業員のモチベーション向上や離職予防に直結する重要なテーマです。この機会に現状を見直し、さらなる対策強化にお役立てください。
企業規模別に見る賃上げの実態
今年の5月17日に財務省から「地域企業における賃上げ等の動向について」の調査レポートが公表されました。
早速中身を見ていきましょう。
参照:財務省(2024).地域企業における賃上げ等の動向について
2024年度に「ベースアップ」または「定期昇給」を実施する企業の割合は増加し、ベースアップでは70.7%、定期昇給では81.9%に達しています。
賃上げを行わなかった企業は、全体の2%とかなりの企業で賃上げを実施していることがわかります。
規模別に見ると、中小企業が2023年度に賃上げをしたのは54.3%でしたが、今年度は63.1%が賃上げに取り組んだそうです。
中小企業でも賃上げの取組みが広がっており、大企業と比べてもその伸び幅が顕著です。
大企業と比べると中小企業は、財源の固定的な確保が難しいのですが、それでも昨年と比べて約10%も賃上げに取り組む企業が増えています。
実施にどのくらいの額を賃上げしているかもみると、「3%以上」と回答した企業の割合が59.8%で、去年と比べると大幅な増加傾向が見てとれます。
賃上げをする理由としない理由
多くの企業で賃上げ率や引き上げ率共に増加傾向ですが、なぜ増えているのかの理由も確認していきましょう。
2024年度に賃上げを実施する理由として最も多く挙げられたのは、「社員のモチベーション向上、待遇改善、離職防止:86%」と圧倒的でした。
次点で、「物価上昇への対応:67%」「新規人材の確保:54.9%」が挙げられました。
近年はあらゆる商品が値上げされていますので、それに対応するためにも賃上げを実施したり、それによって従業員のモチベーションを保つことにつなげているのかもしれません。
次に、賃上げをしなかった企業の理由を見てみましょう。
最も多かったり理由は「業績低迷(見通し含む):63.2%」で、続いて「価格転嫁ができない、追いつかないため:26.3%」でした。
業績が振るわないことで、賃上げの人件費も担保できないのは、オーソドックスな理由といえるでしょう。
加えて、「価格転嫁ができない、追いつかないため:26.3%」というデータから、人件費を確保したくても出来ない事情があるのかもしれません。
人件費がどうしても確保できない場合でも、「あなたの頑張りや成果はちゃんとみているよ」と丁寧にコミュニケーションするだけでも、従業員のモチベーションにつながる可能性があります。
最後に
以上、今回は近年の賃上げ事情についてお伝えしました。
賃上げは、従業員のモチベーション向上や離職防止に直結し、企業の成長と安定に寄与する重要な要素です。適切な賃上げを実施することで、優秀な人材の確保や従業員の働きやすさを向上させることができます。
また、賃上げを実施するにあたり、業績や市場の動向を踏まえた計画的なアプローチが求められます。従業員とのコミュニケーションを大切にし、信頼関係を築くことが賃上げのメリットを最大限に活かすことにつながります。
今回の調査結果を一つの参考としてご活用いただければ幸いです。
賃上げはやろうと思っても出来ない企業もあると思います。その際でも、「今はこのような会社業績で賃上げは出来ないけど、あなたの今年の頑張りはちゃんとわかっているし、来年以降の業績で担保していくよ」と誠実に伝えてくれたら印象は変わってくるなと感じました。お金の話ですが、お金だけでなく、普段からのコミュニケーションも大切ですね。