はじめに

パートやアルバイトなど短時間勤務で働く人たちが、失業給付や育児休業給付などを受け取れるようにするため、雇用保険の加入対象を、1週間の労働時間が「10時間以上」の人までに拡大することを盛り込んだ改正雇用保険法などが、参議院本会議で可決・成立しました。

働き方の多様化を踏まえ、子育てを支援する狙いがあるようです。詳しい内容は以下の通りです。

1. 雇用保険の適用拡大

雇用保険の被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用対象を拡大する。

→新たにおおよそ500万人が給付を受け取れるようになる見通しです。これまでは雇用保険の対象外で、失業保険や育児・介護休業給付の受給をあきらめていたパートタイマーやアルバイトも新たに雇用保険の加入対象となる可能性が高まります。

(施行期日:令和10年10月1日)

2. 教育訓練やリ・スキリング(社会の変化に対応するための知識や技術を学びなおすこと)の支援の充実

①自己都合で退職した者が雇用保険の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限をせず、雇用保険の基本手当を受給できるようにする。
(自己都合で退職した者については、給付制限期間を原則2か月としているが、1か月に短縮する。)

②教育訓練給付金について、訓練効果を高めるためのインセンティブ強化のため、雇用保険から支給される給付率を受講費用の最大70%から80%に引き上げる。

③自発的な能力開発のため、被保険者が在職中に教育訓練のための休暇を取得した場合に、その期間中の生活を支えるため、基本手当に相当する新たな給付金を創設する。

→教育訓練中の生活費を支援することで、優秀な人材を一人でも多く増やすことを目的とした施策となります。また、IT技術やAIの進化などにより、労働者の働き方は大きく変化しているため、労働者に学んでもらう人材育成手段として、リ・スキリングが重要視されています。

(施行期日・①令和7年4月1日 ②令和6年10月1日 ③令和7年10月1日)

3. 育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保

①育児休業給付の国庫負担の引下げの暫定措置を廃止する。
(暫定措置では、国庫負担割合が80分の1と引き下げられていましたが、今後本来の8分の1負担へと戻ります。)

②育児休業給付の保険料率を引き下げつつ(0.4%→0.5%)、保険財政の状況に応じて引下げ(0.5%→0.4%)られるようにする。
(すぐには上げる必要はないとして、財政状況に応じて、法改正をしないでも料率を柔軟に調整できる「弾力条項」を設ける方針。これにより、当面は現行比率のままにして、給付総額が一定程度増えた場合に料率を上げるようにする。)

→男性の育児休業取得率向上を目指した国の支援に伴い、育児休業給付金額が増える状況を想定して設けられた改正内容です。

(施行期日:①令和6年5月17日 ②令和7年4月1日)

4. その他雇用保険制度の見直し

教育訓練支援給付金の給付率の引下げ(基本手当の80%→60%)及びその暫定措置の令和8年度末までの継続、介護休業給付にかかる国庫負担引下げ等の暫定措置の令和8年度末までの継続、就業促進手当の所要の見直し等を実施する。等

(施行期日:令和7年4月1日 一部は令和6年5月17日)


その他、詳しい内容は下記URLを参照ください。
厚生省:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/zensedai_hosyo/dai17/siryou4.pdf


法改正により、雇用保険の適用拡大に伴う事務手続きの負担が増すことが予測されます。また、パートタイマーなど短時間勤務を多数雇用している事業所には影響が大きいと考えられます。内容を一度ご確認いただき、今のうちに社内体制を整え、準備を進めておくことをおすすめします。