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1. リスキリングが注目されています
「リスキリング」という言葉が注目されています。
リスキリングは2023年の骨太の方針で掲げられた「三位一体の労働市場改革」の一つとして政府の重点支援が予想されており、今後のAI活用といった観点からも企業にとって重要視されています。
リスキリング(Reskilling)の意味は、職業能力の再開発、再教育です。
近年では、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略で、新たに必要となる業務や職種に順応できるように、従業員がスキルや知識を再習得するという意味で使われることが増えています。
2. リスキリングが注目されている背景
リスキリングが注目されているのは「政府の方針で掲げられているから」ということもありますが、注目されるべき土壌ができているというのも大きな理由です。
リスキリングが注目されている背景は以下の通りです。
1. 従業員のデータリテラシー向上が求められている
2. AIの発展
3. 働き方の変化
まず、「1. 従業員のデータリテラシー向上が求めらている」についてですが、人手不足の問題に対処するための業務効率化や生産性向上が必要となり、その手段として従業員一人ひとりのITスキルの底上げが必要となっているという背景があります。
人手不足については、帝国データバンクの2024年1月の調査(有効回答企業数1万1,431社)によると、2024年1月時点で正社員が「不足」と感じている企業は52.6%となっており、これまで最も多かった2019年(53.0%)に次ぐ高水準となりました。
また、非正社員については、29.9%で、約3割の水準で推移しているため、業務効率化や生産性向上は多くの企業が直面している課題といえるでしょう。
「人手不足に対する企業の動向調査(2024年1月)」帝国データバンク
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p240209.html
次に「2. AIの発展」についてですが、AIの技術が進歩していく中で、単純作業はAIに取って代わられる可能性が高く、新たな職種や業務に対するためのスキルが必要となります。
また、生成AIによるビジネスの変革も十分に考えられ、生成AIを活用したビジネスモデルの変化に対応できるように、AIそのものを使いこなすためのリスキリングも求められます。
「3. 働き方の変化」もリスキリングが注目される背景の一つです。新型コロナウィルスによってオフィスでの業務が中心だったものがテレワークへとシフトして、対面でも顧客対応がオンラインに移行するなど就業環境が一変しました。
これまでの働き方では対応できない状況が増えたことにより、新しいスキルの習得が急務となっています。
3. リスキリングを行うメリット
リスキリングに会社全体で取り組む場合、研修や教育プログラムを導入するための費用、社員のモチベーション維持のための施策等が必要になるでしょう。
そのため、リスキリングを行うメリットを知り、費用対効果を考えておくことは重要です。リスキリングを行うメリットは以下の通りです。
・学んだスキルを実務に活かせる
・生産性が向上する
・新しいアイディアが生まれやすくなる
・変化に適応することができる
・社員満足度が向上する
リスキリングを行うより先に、必要となる技術やスキルを有する外部の人材を採用する手段もありますが、組織や業務に馴染むまでに時間がかかるという難点があります。
その点、リスキリングを行い、自社の社員にパワーアップしてもらうという方法を取ることで、効率的に生産性向上を図れる可能性が高くなるでしょう。
4. リスキリングを浸透させるには
リスキリングを浸透させるには大きく3つのステップが考えられます。
ステップ1:社員の学ぶ意欲を喚起
ステップ2:学ぶ環境を用意
ステップ3:学んだことを活かす場を用意
最初のステップとしてまず取り組むべきことは「社員の学ぶ意欲を喚起」することです。なぜリスキリングが必要になるか説明し、疑問点については解消していく必要があるでしょう。
自社に学ぶ環境が不足している場合は、研修やeラーニング等の「学ぶ環境を用意」します。そして最後に「学んだことを活かす場を用意」します。
自社の状況に合わせて施策を打ち、継続して取り組むことがリスキリングを浸透させるために重要となります。
5. 学び・学び直しのガイドラインが発表されています
DXに限らず、広い意味でのリスキリングのガイドラインが厚生労働省により発表されています。
学び・学び直しについての基本的な考え方や、労使が取り組むべき事項、公的な支援策等が体系的に示されているため、ご確認いただくことをおすすめします。
「職場における学び・学び直し促進ガイドラインについて」厚生労働省
https://manabi-naoshi.mhlw.go.jp/guideline/#anc05
リスキリングに継続的に取り組む仕組みを作ることによって、社員が自律的に成長する土壌を整えることもできるでしょう。社員に成長してもらう良い機会にもなると思います。