はじめに
花粉症は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎の中でもスギやヒノキなどの春の花粉が原因によるものが多く、主にくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、充血などが生じます。
花粉飛散量に比例して症状が悪化する傾向があり、集中力の低下や不眠を引き起こし、仕事にも大きな影響を及ぼします。
飛散量のピークは3-4月で、まさに今の時期が最も多いと言われています。
日本花粉症学会会誌.2020;65(2):55-66
政府も花粉の影響を重く見ており、昨年10月に「花粉症対策 初期集中パッケージ」を打ち出し、花粉の対策と飛散防止に努めています。
対策としては、マスクや市販薬が最も簡易的ですが、効果も限られ、強い薬になると副作用も大きくなってしまいます。副作用が大きくなると、当然仕事にも大きな影響を与えます。
このように、花粉症は命に関わることではありませんが、仕事を行う上で決して無視できない要因と言えるでしょう。
では実際に、企業ではどれくらいの従業員が苦しんでいるのか、調査結果と共に見ていきましょう。
約4分の1が花粉症による業務阻害を感じている
東京商工リサーチでは、4,639社に花粉症と業務に関してのアンケート調査を実施しました。
その結果、4社に1社が「悪影響あり」、46%が「あまり与えていない」、28%が「全く与えていない」と回答しました。
企業規模で見ると、大企業よりも中小企業の方が、「悪影響あり」の割合が高かった層です。
これは、代替できる従業員の数や、在宅勤務制度、空気清浄機の整備などの対策が、大企業の方が進んでいるためだと言われています。
「企業の花粉症影響」アンケート調査 東京商工リサーチ(2024)
悪影響が出ている企業の9割以上が「作業効率の低下」を指摘
続いて上記調査で、「悪影響が出ている」と回答した企業へ、具体的にどのような影響があるかを聞きました。
その結果、「従業員の作業効率の低下」と答えた企業が92.7%(1,143社中、1,060社)で、圧倒的な割合でした。
次点で、「医療機関受診を理由とした遅刻・早退・休暇の増加」が32.2%(369社)で、花粉シーズンに入ると従業員の受診などで影響が出ていることが分かります。
業種別では小売業や情報業、介護業などが悪影響を感じている
最後に、どのような業種の企業が、最も悪影響を感じているのか見ていきましょう。
調査結果では、アパレルや雑貨小売など「織物・衣服・身の回り品小売業」が50.0%で最も高い割合となりました。
次いで、「映像・音声・文字情報政策作業」が47.0%(17社中、8社)、訪問介護などの「社会保険・社会福祉・介護事業」と「自動車整備業」が各40.9%となりました。
屋外作業の多い業種がトップに来るかと思いましたが、そんなことはなく、接客や来店客の出入りなど、花粉が室内に入り込みやすい業種のほうが苦しんでいるようでした。
以上となります。
皆さまの組織ではいかがでしょうか。
明確な悪影響が出ていなくても、苦しんでいる従業員がいるかもしれません。
花粉症がひどい従業員には、近くに空気清浄機を置いたり、外から戻るときには服をたたいて花粉を落としたりと、何気ないことが業務パフォーマンスにつながるかもしれません。
今回は花粉症が業務へ与える影響についてでした。これまで全く感じたことがないような人でも、突然花粉症になることもあるそうです。自身の症状はもちろん、自分が花粉を社内へ持ち込んで、他のスタッフを苦しませていないか注意していこうと思いました。