はじめに
今回は2月16日に閣議決定されました「子ども・子育て支援法等の一部法律案」の内容についてお伝えさせていただきます。
政府は少子化対策の強化に向けて、子ども・子育て支援法などの改正案を決定しました。
これは、これまで議論を深めてきた子ども・子育て政策を取りまとめたもので、①ライフステージを通じた経済的支援の強化、②すべての子ども・子育て世帯への支援の拡充、③共働き・共育ての推進の3本柱で施策を盛り込んでいます。
詳しい内容は以下のとおりです。
1. 「加速化プラン」において実施する具体的な施策
(1)ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化
①児童手当について、
(1)支給期間を中学生までから高校生世代までとする
(2)支給要件のうち所得制限を撤廃する
(3)第3子以降の児童に係る支給額を月額3万円とする
(4)支払月を年3回から隔月(偶数月)の年6回とする
②妊娠期の負担軽減のため、妊婦のための支援給付を創設し、当該給付と妊婦等包括相談支援事業とを効果的に組み合わせることで総合的な支援を行う。
(2)妊婦のための支援給付とあわせて、妊婦等に対する相談支援事業(妊婦等包括相談支援事業)を創設する。
→家族等から十分な援助を受けられない妊婦を対象に、妊娠から出産まで切れ目のない支援を提供する。(伴走型相談支援と、10万円相当の出産子育て応援ギフト)
②保育所等に通っていない満3歳未満の子どもの通園のための給付(こども誰でも通園制度)を創設する。
→親が働いていなくても月に一定時間、子どもを預けられるようにする新たな通園制度。すべての子どもに保育所とつながる機会が与えられ、親にとっても育児負担の軽減や孤立感の解消につながるとして期待されている。
③産後ケア事業を地域子ども・子育て支援事業に位置付け、国、都道府県、市町村の役割を明確化し、計画的な提供体制の整備を行う。
→産後ケア事業とは、産後に心身の不調や育児不安のある方などに対して、助産師等の専門職がサポートするもの(宿泊、日帰り、または訪問でのサービスがある)。
④教育・保育を提供する施設・事業者に経営情報等の報告を義務付ける(経営情報の継続的な見える化)。
⑤施設型給付費等支援費用の事業主拠出金の充当上限割合の引き上げ、拠出金率の法定上限の引き下げを行う。
⑥児童扶養手当の第3子以降の児童に係る加算額を第2子に係る加算額と同額に引き上げる。
→児童扶養手当とは、ひとり親家庭等に対し、生活の安定と児童の福祉の増進を図ることを目的として支給される手当のこと(第3子以降の支給、月額最大6,250円から第2子と同じ月額10,420円に引き上げる)。
⑦ヤングケアラーを国・地方公共団体等による子ども・若者支援の対象として明記。
⑧基準を満たさない認可外保育施設の無償化に関する時限的措置の期限到来に対する対応を行う。
(3)共働き・共育ての推進
①両親ともに育児休業を取得した場合に支給する出生後休業支援給付及び育児期の時短勤務を行った場合に支給する育児時短就業給付金を創設する。
→育児時短就業給付金により時短勤務で減ってしまう収入を補い、時短勤務を利用しやすくすることで、育児と仕事の両立を促す。
②自営業・フリーランス等の育児期間中の経済的な給付に相当する支援措置として、国民年金第1号被保険者の育児期間に係る保険料の免除措置を創設する。
2. 子ども・子育て支援特別会計(いわゆる「こども金庫」)の創設
子ども・子育て政策の全体像と費用負担の見える化を進めるため、年金特別会計の子ども・子育て支援勘定及び労働保険特別会計の雇用勘定(育児休業給付関係)を統合し、子ども・子育て支援特別会計を創設する。
→特別会計とは、特定の事業を行う場合に一般会計と切り離して管理される経理のことで、資金の運用状況を明確にするため、特定の事業に関して個別の会計が認められるもの。
3. 子ども・子育て支援金制度の創設
①国は、1(1)①②、(2)②、(3)①②に必要な費用を充てるため、医療保険者から子ども・子育て支援給付金を徴収することととし、額の算定方法、徴収の方法、社会保険診療報酬支払基金による徴収事務等を定める。
→国民からすれば、支援金を納付することになり新たな負担となるが、政府は賃上げや歳出改革で医療・介護保険料などの負担率を下げることで、「実質的な負担は生じさせない」と強調している。
②医療保険者が被保険者等から徴収する保険料に納付金の納付に要する費用(子ども・子育て支援金)を含めることとし、医療保険制度の取扱いを踏まえた被保険者等への賦課・徴収の方法、国民年金保険等における低所得者軽減措置等を定める。
その他、詳しい内容は以下URLをご参照ください。
https://www.cfa.go.jp/laws/houan/e81845c0
政府は、少子化に歯止めをかけるには、若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでこれから6~7年がラストチャンスだとし、施策を着実に実行に移していきたい考えを示しています。人事労務にかかわる施策もありますので、内容をご確認いだくことをおすすめいたします。