入社時に必要な手続き

春になると人事異動や新入社員の入社が多く、手続きなど人事業務が多忙になりがちです。新入社員から提出していただく必要な書類やどのような手続きが必要か、2月のうちに確認してみてはいかがでしょうか。

労働条件の明示

従業員を新しく雇用する際、企業はどのような条件で働いてもうらうかを明確に伝える必要があります。令和6年4月より明示すべき労働条件が追加されています。
参照: https://habitat-sr.jp/habitatnews45/
この条件は、雇用形態を問わず労働基準法を遵守したものでなければいけません。

また重要な項目に関しては書面に明記して、従業員本人へ渡します。労働条件の具体的な内容には、以下のようなものがあります。

契約期間に関する事項(有期契約か無期契約か)
就業場所や業務内容に関する事項
始業時刻、終業時刻や残業時間、休憩時間に関する事項
法定休暇、有給休暇に関する事項
給与の計算や支払に関する事項

「雇用契約書」や「労働条件通知書」など、上記の内容を明示する書面の名称は問いません。名称に関わらず、重要な事項が分かりやすく伝えられている書面であることが大切です。

健康保険・厚生年金保険の加入手続き

健康保険や厚生年金保険への加入手続きも、従業員の入社時に重要な手続きです。
特に健康保険は、加入することで保険証が手元に届きます。そのため、従業員だけではなくその家族にとっても大切な手続きです。

健康保険や厚生年金保険には、フルタイムで働く方は必ず加入します。
パートタイムで働く方については、1週間の所定労働時間と、ひと月の所定労働日数がフルタイム従業員の4分の3以上の場合に加入します。
目安としては、週30時間以上働く場合は、パートであっても健康保険や厚生年金保険に加入する必要があると言えます。

具体的な手続きは、「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」という書面の提出です。提出は従業員を雇用した日より5日以内に行います。提出先は、日本年金機構の各地域の事務センターです。

雇用保険の加入手続き

健康保険や厚生年金保険と同様、雇用保険もフルタイムの従業員は全員加入します。
パートタイムの従業員については、週20時間以上働く場合に加入が必要です。
学生は、週の労働時間に関わらず、雇用保険への加入は不要です。

具体的な手続きは、「雇用保険被保険者資格取得届」という書面の提出です。提出は従業員を雇用した翌月10日までに行います。提出先は管轄のハローワークです。

所得税に関する手続き

入社時には税金に関する手続きが必要であり、その一つが所得税です。
具体的な手続きは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出です。これは、扶養家族の有無を確認するために必要な書類です。6月給与計算より対応が必要となる定額減税の計算のためにも必要となります。

この申告書は本来、税務署長、自治体へ提出するものですが、提出を求められた場合以外は特に提出する必要はなく、企業が保管することになっています。

さらに、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」以外にも、従業員に前職がある場合、年末調整を行う際に「前職の源泉徴収票」が必要です。

住民税に関する手続き

住民税に関する具体的な手続きは、「給与所得者異動届出書」という書面の提出です。提出期限は従業員を雇用した月の翌月10日まで、提出先は従業員の住民票がある市区町村など自治体です。

「給与所得者異動届出書」は、従業員の住民税を自社で給与から天引きすることを報告するための書類です。
これまで個人で住民税を納付していた方は、雇用されたことによって住民税が新たに給与から天引きされることになります。また転職で入社した方は、住民税が前会社での天引きから自社での天引きに変わります。
このような住民税徴収方法の変更を伝えるために、「給与所得者異動届出書」が必要となります。

入社時に必要な書類

最後に、入社時に従業員が準備しなければならないものの一覧をお伝えします。
こちらを見ながら、チェックしてみましょう。

・マイナンバーを確認できるもの
社会保険の手続きでは、従来基礎年金番号を確認していました。しかし現在では、マイナンバーの確認ができれば基礎年金番号の記載は不要です。
マイナンバーを確認できるものには、以下の種類があります。

1.写真付き個人番号カード(マイナンバーカード)
2.個人番号通知カード+写真付き身分証明書
3.マイナンバー入り住民票+写真付き身分証明書

・雇用保険被保険者番号を確認できるもの
雇用保険被保険者番号は、雇用保険の加入手続きに必要です。雇用保険被保険者番号を確認できるものには、以下のような種類があります。

1.雇用保険被保険者証
2.前職の雇用保険資格喪失確認通知書もしくは離職票

・銀行口座の情報が確認できるもの
給与は口座振込みで支払われることが多いため、入社時には給与の振込先口座の内容が分かるものを提出する必要があります。
具体的には、通帳の表紙や最初のページなどの口座情報が分かる箇所のコピーを提出することが一般的です。

・従業員本人の住所が確認できるもの
従業員の住所を確認できる書類が必要な場合もあります。
具体的な書類としては、住民票や運転免許証のコピーなど、公的な証明書の写しを提出することが一般的です。

・前職の源泉徴収票
転職で自社に入社した従業員の年末調整を行う場合、前職の源泉徴収票が必要です。ただ、保管時の紛失や漏えいなどのリスクを避けるために、入社時よりも実際に必要になる年末ごろまでに提出してもらうのかよいかもしれません。