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はじめに
「令和5年就労条件総合調査」(厚労省)によると、令和4年1年間の有給休暇取得率は62%で、調査を開始した昭和59年以降過去最多となり初めて60%を超えました。
このように、有給休暇の取得状況は近年において上昇傾向にありますが、有給休暇の管理については間違えやすい部分もあります。
今回はあらためて、少し複雑なパート・アルバイト従業員の有給休暇運用方法について解説させていただきます。
パート・アルバイト従業員にも当然に権利が発生
法律上有給休暇は、以下の要件を満たしたすべての従業員に対して付与する義務があります。
①入社から6か月継続して勤務している
②全労働日の8割以上勤務している
パート・アルバイト従業員が上記の要件を満たした場合は、有給休暇を与えなくてはなりません。
ただし、フルタイムの正社員と同じ日数を付与する必要はなく、所定労働日数・時間に応じた付与方法が認められています。これを比例付与といいます。
次に比例付与について確認します。
パート・アルバイト従業員の有給休暇付与日数の考え方
パート・アルバイト従業員の場合、以下のような基準で有給休暇の付与日数が決まります。
①「週の所定労働日数が5日」または「週の所定労働時間が30時間以上」である場合
→比例付与の対象とならず、フルタイムの正社員と同様の日数を付与する必要があります。
②「週の所定労働日が4日以下」かつ「週の所定労働時間が30時間未満」である場合
→比例付与の対象となります。
比例付与の対象となる場合、有給休暇の日数はその従業員の所定労働日数によって決定します。日数は下表の通りです。
週の所定労働日数が決まっていない場合はどうなる?
週の所定労働日数は就業規則や雇用契約によって定められていますが、シフト制で働いている従業員は、週の所定労働日数が明確に定まっていないケースもあるかと思います。
この場合においては、基準日(※1)の直近1年間(入社後初めての有給休暇付与の場合は6か月)の労働日数の実績を考慮して、1年間の所定労働日数を判断することも差し支えないとする行政通達があります(訪問介護事業について、平成16年8月27日基発0827001号)。
例えば、入社6か月経過後に付与される有給休暇の日数について、入社から6か月での労働日数の実績を2倍にした日数を、「1年間の所定労働日数」とみなして判断することも差し支えないということになります。
※あくまでも原則は、就業規則や雇用契約によって定められている日数です。
(※1)基準日:原則として入社した日から6か月経過した日を基準日といいます。基準日から起算して毎年有給休暇が付与されます。
途中で所定労働日数が変更された場合
労働契約が変更されたことにより、所定労働日数が変更された場合には、何日間の有給休暇を付与すればよいのでしょうか。
この場合は、次回の基準日に付与される有給休暇から変更後の所定労働日数に基づいた日数を付与することになります。
パート・アルバイト従業員に有給休暇を5日取得させる必要はあるか
2019年4月の働き方改革関連法案の施行にともない、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対しては、年間5日以上の有給休暇を取得させる義務があります。
この法律は、パート・アルバイト従業員も対象になるのでしょうか。
この場合、年間10日以上の有給休暇を付与するパート・アルバイト従業員には、年間5日以上有給休暇を取得させなくてはなりません。
有給休暇に関する罰則
では最後に有給休暇に関する主な罰則を確認します。
なお罰則による違反は、対象となる従業員1人につき、1つの罪として取り扱われるため、例えば有給休暇5日取得義務に違反した従業員が複数人いた場合は、その人数分の罰金となります。
労働基準監督署の指導は、すぐに罰則を適用するということではなく、是正に向けて丁寧に指導していくこととなっていますが、法律違反にならないように取り組んでいく必要があります。
今回は、アルバイト・パート従業員の有給休暇について解説させていただきました。細かい内容もございますので、今一度御社での運用を確認していただければと思います。