はじめに

現在いわゆる団塊の世代の方々が70代半ばとなり、今後さらに家族介護の問題が深刻になると見込まれます。
また仕事と介護を両立できず退職される方(介護離職者)は増加しており、昨年は10万人を超えました。

そこで今回は仕事と介護の両立について考えていきたいと思います。

まずはじめに今年10月に行われた東京商工リサーチによる「介護離職に関するアンケート調査」が公表されていますので、職場における介護離職の状況を見てみましょう。

職場における介護離職の状況

【1】介護離職の発生状況
過去1年間(2022年9月~2023年8月)における介護離職者に関して、「発生した」と回答した職場は10.1%となっています。

【2】介護離職者の性別
過去1年間の介護離職者の性別については、下記のように男性の方が多いという結果になっています。
男性の方が多い 51.6% 女性の方が多い 37.0% 同じくらい 11.2%

【3】介護離職者における介護休業制度などの利用状況
過去1年間に発生した介護離職者のうち、介護休業・介護休暇のいずれかを利用していた人の割合はどの程度ですか?の問いに対して、介護休業・介護休暇のどちらの制度も「利用したことがない」という回答が54.4%となっています。(※下表)
※東京商工リサーチ調べ「介護離職に関するアンケート調査」

また企業規模別に見ると、介護休業・介護休暇のどちらの制度も利用しないまま退職された方は中小企業が58.24%、大企業が36.84%となっています。

特に中小企業では制度の周知が進んでいない、代替人材の確保が難しいなどの理由で介護休業を利用しないまま離職にいたっているのではないかと推測されます。

介護離職は離職者ご本人にとっても生活の不安につながるものであると同時に、会社にとっても大切な人材を失ってしまうことになります。

まずは介護休業など制度を周知し、従業員の方に理解してもらうことが大切になってきます。

介護に関する両立支援制度はどのようなものがあるの?

では、働きながら家族を介護するときの両立支援制度にはどのようなものがあるか見ていきましょう。

下表は、育児・介護休業法に定められている家族の介護に関する制度の内容です。

「介護のために休みたい」、「数時間だけ介護をしたい」、「介護があるので残業は難しい」、「夜は介護が必要」など、従業員の方の状況に応じて様々な要望が出てくると思います。
従業員の皆さまに制度の違いを理解していただき、どのタイミングでいずれの制度を利用するか選択してもらうことが重要です。

介護休業と介護休暇の違い

次に介護休業と介護休暇の違いを見てみましょう。
介護休業と介護休暇は名前も似ており、分かりづらい部分もあるかと思いますので、両者の内容を比べながら違いを確認しましょう。
介護休業を取得する場合、雇用保険に加入されており一定の条件に該当する方は、休業中の所得補てんとして「介護休業給付金」が支給されます。

介護休業Q&A

では最後に、Q&A方式で介護休業のご説明をさせて頂きます。

Q1. 介護休業の93日は短いように感じます。なぜ93日なのでしょうか?
A1. 93日はこれから始まる介護の体制を整えることを想定している期間です。

従業員の方が自ら介護に専念するための期間を想定しているのではなく、介護サービスを受けるための準備などこれから始まる介護の体制を整えるための期間が想定されています。もちろん従業員の方自ら介護に専念するため休業しても問題ありません。

Q2. 介護休業給付金を受給する条件を教えてください。
A2. 雇用保険に加入されている方で、介護休業開始日より前2年間に雇用保険の加入期間が12か月以上ある方が対象です。

なお、介護休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月ない場合であっても、病気療養中であったなどの場合は受給要件が緩和される場合があります。

Q3. 1か月休業した場合どのくらい給付金はもらえますか。
A3. 「介護休業を開始する前6か月間の給与平均額×支給日数×67%」が支給額です。

(支給額に上限があります)


もちろん私も家族の介護については、他人ごとではありません。
「その時がきたらなんとかしよう!」という割り切った気持ちも大切ですが、それだけでなく、あらかじめ制度を把握し、できる範囲でイメージしておくことも大切と感じています。