はじめに

配偶者の扶養内で働いているパート従業員の方の年収が一定額以上となると、扶養から外れご自身で社会保険に加入することになります。ご自身で社会保険料を支払うこととなり、手取り収入が減ってしまういわゆる106万円の壁・130万円の壁が問題となっています。

こちらの問題への対応策として「年収の壁・支援強化パッケージ」が発表され、今話題となっています。

106万円・130万円の壁とは

まずはじめに「年収の壁」についてご説明いたします。

年収の壁は大きく分けて①税金の壁と②社会保険の壁がありますが、今回の支援パッケージの対象となっているのは「社会保険の壁」の方です。

そして106万円・130万円の壁とは、配偶者に扶養されて働くパート従業員の方などの年収が、106万円や130万円以上になると、それまで負担する必要のなかった社会保険料をパート従業員の方ご自身で負担することになり、手取り収入が減ってしまう現象のことをいいます。

もちろん、パート従業員の方ご自身で社会保険に加入することでより高い保障を受けられるというメリットはあります。しかし、昨今の物価高騰などにかんがみれば、手取り収入が減ることは困る!という声があがることは当然のことと思われます。


このような106万円の壁や130万円の壁を意識し働く時間を調整する方も多く、労働現場の人手不足の一因としても問題視されています。

106万円の壁への支援強化パッケージとは

それでは、今回のテーマ【年収の壁・支援強化パッケージ】についてです。
まず、106万円の壁への支援強化パッケージを解説いたします。

・パートで働く方の年収が106万円以上となり、新たに社会保険に加入することとなった場合、従業員1人あたり最長3年間で最大50万円の助成を行います。
※入社6カ月以上の方が対象など条件あり(2023年10月20日キャリアアップ助成金のコース追加)。

・保険料負担によって手取り収入が減らないような取り組みとは、「賃上げ」「労働時間の延長」「社会保険適用促進手当」などを指します(社会保険適用促進手当の創設)。
・社会保険適用促進手当については、社会保険料を決める際の標準報酬月額の算定対象外とします。


上図の例では、年収104万円の方が106万円になり、新たに社会保険に加入する場合です。
約16万円の保険料が発生するため、手取り収入は約90万円となってしまいます。
ここで、保険料相当額である16万円を会社が従業員に手当(「社会保険適用促進手当」)として支給した場合は、手取り収入を減らさない取組みをしているとし、助成金の対象となります。
そして、この「社会保険適用促進手当」については、従業員負担分の保険料を上限として社会保険料の算定対象外とされるため、本来ならば手当分にかかる会社の社会保険料の負担分がなくなり会社にもメリットがあるとされています。

※ただし、社会保険適用促進手当の対象は「標準報酬月額が10.4万円以下」の従業員に限定、就業規則(賃金規定)の改定が必要などの条件があり留意が必要です。

※詳細はこちらをご参照くださいませ。(キャリアアップ助成金社会保険適用時処遇改善コース)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/syakaihoken_tekiyou.html

130万円の壁への支援強化パッケージとは

では次に130万円の壁への支援強化パッケージをみていきましょう。

~会社の証明による被扶養者認定の円滑化~
・パート従業員の方が繁忙期に労働時間を延長したなどの理由で、一時的に年収が130万円以上となる場合です。この場合でも、会社が一時的に収入が増えた旨を証明すれば被扶養者のままでいることができます。

・ただしあくまでも「一時的な事情」として被扶養者認定を行うことから、連続2回(2年)までが上限です。


上図の例では、令和4年10月時点で年収見込120万円の方が、繁忙期による労働時間延長のため残業代が20万円発生(年収見込140万円)した場合です。
一時的な事情として会社がその旨を証明すれば、令和5年10月の扶養確認時に引き続き被扶養者認定が受けられるようになります。

※厚生労働省:「130万円の壁」でお困りのみなさまへ
https://www.mhlw.go.jp/content/001159346.pdf

年収の壁・支援強化パッケージは暫定措置

106万円への対応は最長3年、社会保険適用促進手当が社会保険料の算定対象外とされる期間も2年です。
また130万円の壁への対応として、年収130万円以上でも被扶養者として認定されるのは連続2回(2年)までです。

これらのパッケージの期間が過ぎた後の取組みについては、まだ明らかにされておらず、106万円・130万円の壁の根本的な解決はこの先になりそうです。


今回はパッケージの概略を解説させていただきましたが、詳細はかなり複雑です。また未決定な部分もあり順次公開予定となっています。これからの政府からの発表に注視していきたいと思います。