今回は従業員の方が副業などで、二つの会社から給与がある場合の社会保険に関する注意点について解説いたします。

■副業・兼業容認の増加

公益財団法人産業雇用安定センターが実施した「従業員の『副業・兼業』に関するアンケート調査結果」によると従業員の副業・兼業の容認状況は以下のようになっています。

「雇用による副業・兼業」を認めている 25.7%
今後「雇用による副業・兼業」を認める予定 6.2%
「個人事業主等としての副業・兼業」を認めている 13.4%
今後「個人事業主としての副業・兼業」を認める予定 3.1%
認める予定はない 27.7%
検討していない 23.9%

公益財団法人産業雇用安定センター
https://www.sangyokoyo.or.jp/topics/2023/p1ii5q0000006t3n-att/besshi2.pdf

以上より副業・兼業を容認する企業が増加していることが分かります。

また就業規則のご相談を受ける際にも、副業・兼業規定を制定する企業も増えていることからそのことが実感できる昨今です。

■自社の従業員が副業を始めたらここを確認!

副業をしたいと申し出があったときは、おそらく仕事内容を確認されると思いますが、また同時に両方の会社で以下の社会保険加入条件も確認しましょう。

以上の要件を踏まえて三つのパターンが考えられます。

A(アルバイトやパートなどで)どちらの会社においても社会保険加入条件を満たしていない場合
→ 国民健康保険と国民年金に加入するもしくは、健康保険は家族の扶養に入る(配偶者扶養に入る場合は国民年金第3号被保険者となる)。

この場合は、ご自身で手続きしてもらいましょう。

B どちらか一つの会社で、社会保険加入条件を満たしいる場合
→ 満たしている会社の社会保険に加入する。

C どちらの会社も社会保険加入条件を満たしている場合
→ 両方の会社で社会保険に加入する。

■二つの会社で社会保険に加入するとはどういうことか?

二つの会社で社会保険に加入する例として、二つあげさせてもらいます。

①【会社員×会社員やアルバイト】
こちらの例をあげてみたものの、この「会社員×会社員やアルバイト」の両方で社会保険に加入するパターンは稀です。
というのも、両方それぞれの職場で週20時間~30時間以上の所定労働時間ということは難しいと思われるからです。

では、副業が法人経営だとしたらいかがでしょうか。

②【会社員×法人経営】
個人事業主ではなく、法人を設立した場合は経営者一人であっても社会保険の加入が必須です。こちらはCの典型的な例となります。

(例外として、その法人で役員報酬がゼロ、または役員報酬が12,000円/月以下の場合は社会保険の加入ができません。)

二つの会社で社会保険に加入するには日本年金機構に「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出します。

■健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届

主たる事業所を決め、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を被保険者が提出するとなっていますが、多くが主たる事業所で手続きをすることが多いかと思います。
健康保険証は主たる事業所の1枚のみとなります(新しい整理番号は付され、保険証が新しくなります)。

また、それぞれの事業所で受け得る報酬月額を合算した報酬月額により標準報酬月額を決定し、保険料はそれぞれの事業所で受ける報酬月額に基づき按分して決定します。


複数の事業所での勤務となりますと、社会保険だけでなく税制上も少し複雑になりますので、その都度確認していかなければなりません。
また二つの事業所での賃金や役員報酬の改定のタイミングが異なると、保険料の改定も複雑となります。通知された内容をよく確認して給与計算等を進める必要があります。