今回は「月の途中で賃金改定したときの月額変更しの考え方」についてお伝えします。
10月1日以降に最低賃金の引き上げも行われていますので、賃金改定をされる場合に留意すべきポイントを解説いたします。

月額変更の起算日が変わる可能性

10月1日以降、都道府県ごとに決められた発効日に改定後の最低賃金が適用されますが、そのタイミングは1カ月ごとに区切った賃金計算期間の途中となるケースも想定されます。

最低賃金を下回るような賃金の場合、発効日以降の労働に対して最低賃金以上の賃金を支払う必要がありますが、賃金計算期間の途中に発効日がある場合は下記のいずれかによって最低賃金の引き上げに対応する必要があります。

賃金引上げのタイミング

賃金引上げをする場合、以下のどちらかの対応をする必要があります。
①賃金計算期間の初日に前倒し賃金額を引き上げる
②賃金計算期間の途中に発効日に合わせて賃金額を引き上げる

たとえば、賃金計算期間が前月16日から当月15日、賃金支給日が当月25日の場合で、最低賃金の発効日が10月1日のケースを考えてみます。

そうなると①、②の対応は以下の通りです。

①賃金計算の初日に前倒し賃金額を引き上げる(9月16日に引上げ)
10月起算となり、10月25日、11月25日、12月25日に支給される賃金によって月額変更を判断
②賃金計算期間の途中の発効日に合わせて賃金額を引き上げる(10月1日に引上げ)
11月起算となり、11月25日、12月25日、1月25日に支給される賃金によって月額変更を判断

①、②のどちらの対応をしなければならない理由については、日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」で取り上げられているQ&Aに基づいています。

日本年金機構のQ&A

Q. 給与計算期間の途中で昇給した場合、どの時点を起算月として随時改定の判断を行うのか。
(例)当月末締め翌月末支払いの給与で、当月15日以降の給与単価が上昇した場合

A. 昇給・降給した給与が実績として1カ月分確保された月を固定的賃金変動が報酬に反映された月として扱い、それ以降3カ月間に受けた報酬を計算の基礎として随時改定の判断を行う。
例示の場合であれば、給与単位が上昇した翌月支払いの給与は単位上昇の実績を1カ月分確保できないため、翌々月の3カ月の起算点として随時改定の可否を判断する。

日本年金機構:「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/jireisyu.pdf


特に「②賃金計算期間の途中の発効日に合わせて賃金額を上げる」を選択する場合は給与計算ソフトが上手く判定できないケースも考えられます。そのため、誤った取扱いをしないよう慎重な対応が求められます。