先日「有給休暇 年5日取得させず送検」というニュースが目にとまりましたので、今回の記事ではあらためて「有給休暇の年5日取得義務」について解説させて頂きます。
1.有給休暇 年5日取得させず送検
まずこちらのニュースの概要を紹介させて頂きます。
茨城県にあるコーヒーショップを運営している会社が、年10日以上の有給休暇が付与されている従業員に、年5日の有給休暇を取得させず、書類送検されたという内容です。
茨城県・龍ヶ崎労働基準監督署は、年次有給休暇の時季指定を怠ったとして、飲食業の会社とその代表取締役を労働基準法違反の疑いで水戸地検土浦支部に書類送検した。
同社は平成31年4月1日~令和4年3月31日の期間において、年10日以上の有給休暇が付与されている労働者全員に対し、時季指定を怠り、年5日間を取得させなかった疑い。
違反は従業員からの申告が発端となって発覚した。
令和4年12月に同社に対して是正勧告を行ったが、改善の意思がみられなかったため、送検に踏み切った。
引用元:2023.05.25 労働新聞社ニュース
上記ニュースでは有給休暇を年5日取得させなかったことで書類送検されたとの内容ですが、あらためて「有給休暇の年5日取得義務」について確認します。
2.有給休暇の年5日取得義務とは
労働基準法が改正され平成31年4月より、年に10日以上の有給休暇が付与された従業員に対して、年間で5日以上の有給休暇の取得が義務付けられました。
(1年間の有給休暇付与日数が10日に満たない場合は、上記の有給休暇取得義務の対象にはなりません。)
また年に10日以上の有給休暇が付与された従業員に、年5日取得させなかった場合は、法令違反となり、従業員1人につき30万以下の罰金が科されます。
3.有給休暇の付与条件と日数
次に、有給休暇の付与条件と付与日数をいま一度確認しましょう。
有給休暇は以下の2つの条件を満たしている従業員に付与されます。
・入社から6ヶ月以上勤務している従業員
・全労働日の8割以上勤務している従業員
付与される有給休暇の日数は、フルタイム従業員とパート・アルバイト従業員で異なり、下表の通りとなります。
フルタイム従業員の場合
有給休暇付与条件を満たしているフルタイム従業員は、全員有給休暇の年5日取得義務の対象となります。
パート・アルバイト従業員の場合
1年間の有給休暇付与日数が10日に満たない場合は、年5日取得義務の対象になりませんが、10日以上付与されたパート・アルバイト従業員は年5日取得義務の対象になります。
※パート・アルバイトの従業員でもフルタイム同様に、週5日以上もしくは週30時間以上勤務している場合は、フルタイム従業員と同じ付与日数となります。
4.会社が取るべき対応
□有給休暇管理簿の作成
有給休暇管理簿を作成しましょう。
管理簿には①有給休暇の取得日数、②取得した日にち、③基準日(有給休暇を付与した日)を記載します。
管理方法は紙・エクセル・勤怠システムなどかたちは問いません。
□対象者には年5日の有給休暇を取得させる
管理簿で取得状況を把握し、年に10日以上の有給休暇が付与された従業員に対して、年間で5日以上の有給休暇を取得させましょう。
対象者の中で取得日数が年5日未満の従業員がいる場合、従業員と相談しながら時季指定を行って有給休暇を取得させましょう。
会社が時季を指定する場合には、従業員の意向を聞いた上で行う必要があります。
□計画年休の導入も検討
有給休暇を計画的に取得させる方法として、事前に労使協定を結び就業規則に記載した上で計画的付与制度を設けることもできます。
労使間で事前に合意し、有給休暇の付与日数のうち5日を超える日数の範囲内であれば、会社は指定して従業員に取得させることができます。
例えば、有給休暇が20日付与されている従業員であれば、15日まででしたら会社が指定して取得させることができます。
会社や従業員にあった方法で、有給休暇の取得を促進していきましょう。