「収入」と「所得」はどう違う?

年末調整や扶養手続きの時期になると、「収入」と「所得」の違いで混乱される方も多いと思います。
それもそのはず。書類によってどちらの言葉を使うかが違うからです。

まず、用語を整理しておきましょう。

収入:自分の手元に入ってくるお金や物品(総支給額など)
所得:収入から必要経費を差し引いた金額(実際の利益に近いもの)

たとえば「配偶者を扶養に入れたい」といったとき、
「〇〇円の壁」と言われる「〇〇」は収入の金額を指します。
一方、年末調整で「扶養控除等申告書」に記入するのは所得の金額です。

似ているようでまったく別の概念。ここを取り違えると、扶養認定や控除額の計算を誤ってしまうおそれがあります。

年末調整での扱いー「税制上の扶養」

年末調整では、「扶養控除等申告書」の中に所得の見積額を記入する欄があります。
給与収入しかない場合は、支給総額(交通費など非課税分を除く)から給与所得控除額を差し引いて計算します。

たとえば、年間の給与収入が100万円の場合、所得金額はおおむね35万円程度になります。
「配偶者控除」や「配偶者特別控除」の対象となるかどうかは、この所得金額をもとに判定されます。

社会保険の扶養―「収入」で判定される

一方で、社会保険上の扶養判定は「収入」で判断されます。
ここが税制上の扶養と混同されやすい箇所です。

社会保険では、扶養対象者の年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)であることが条件です。
これは税法上の「所得」ではなく、あくまで「収入」=額面ベースで見る点がポイントです。

さらに、税制上の所得に含まれない以下のようなものも、社会保険上では「収入」に含まれることがあります。

非課税の交通費
雇用保険の失業給付
傷病手当金、出産手当金
労災保険の傷病補償給付 など

また、健康保険組合によっては月額ベースで基準を設けている場合もあります。
収入の定義や確認方法が異なるため、申請前に必ず加入先の保険者の要件を確認するようにしましょう。

具体的な記入のしかた

「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書」では、
「収入金額」と「所得金額」が別々に記載できるようになっています。
ここで大切なのは、収入をもとに給与所得控除を差し引いて所得を算出するよいう手順です。

仮に配偶者の給与収入が103万円の場合、所得はおおよそ38万円。
よって、配偶者控除の対象(所得58万円以下)に該当します。

一方、収入が150万円であれば所得は約85万円となり、「配偶者特別控除」の範囲となります。

こうした数字を誤って記入してしまうと、年末調整の還付額や扶養判定に影響が出るため、早めに確認しておくことが大切です。

実務上のチェックポイント

税と社保で判断基準が違う(税は所得、社保は収入)
非課税項目の扱いに注意(交通費・手当など)
令和7年分から学生世代の扶養要件が一部変更
加入組合によって扶養条件が異なる場合あり

どちらの「扶養」かによって書類の根拠・計算基準が変わるため、混同せずに進めることが重要です。

おわりに

今年の年末調整は、税制改正や扶養範囲の見直しが重なり、例年以上に混乱しやすい内容になっています。

ぜひこの機会に「収入」と「所得」の違いを改めて整理し、社員からの質問にも安心して対応できるように準備をしておきましょう。